たまには・・・イスラームのお話「ハラールとハラーム」について~その2
*****以下転載です。*****
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において
40のハディース 第37回
الأربعين النووية 2015年9月30日
イマーム アンナワウィー編 『40のハディース』解説
第6のハディース
عن أبي عبدِ اللهِ النُّعمانِ بنِ بَشيرٍ رَضِي اللهُ عَنْهُما قالَ:( سَمِعْتُ رسولَ اللهِ صَلَّى اللهُ عَلَيْهِ وَسَلَّمَ يقولُ: {إنَّ الحَلاَلَ بَيِّنٌ وَإِنَّ الْحَرَامَ بَيِّنٌ، وَبَيْنَهُما أُمُورٌ مُشْتَبِهَاتٌ لاَ يَعْلَمُهُنَّ كَثِيرٌ مِنَ النَّاسِ، فَمَنِ اتَّقَى الشُّبُهَاتِ فَقَدِ اسْتَبْرَأَ لِدِينِهِ وعِرْضِهِ، ومَنْ وَقَعَ فِي الشُّبُهَاتِ وَقَعَ فِي الْحَرَامِ، كَالرَّاعِي يَرْعَى حَوْلَ الْحِمَى يُوشِكُ أَنْ يَرْتَعَ فِيهِ، أَلاَ وَإِنَّ لِكُلِّ مَلِكٍ حِمًى، أَلاَ وإِنَّ حِمَى اللهِ مَحَارِمُـهُ، أَلاَ وَإِنَّ فِي الْجَسَدِ مُضْغَةً إِذَا صَلَحَتْ صَلَحَ الْجَسَدُ كُلُّهُ، وَإِذَا فَسَدَتْ فَسَدَ الْجَسَدُ كُلُّهُ، أَلاَ وهِيَ الْقَلْبُ}) رواه البخاريُّ ومسلمٌ.
第 6 の伝承
バシールの息子、アブー・アブドッラーフ・アンヌアマーン―アッラーよ彼ら両名を嘉したまえ―の権威による。彼は伝えている。私はアッラーの御使い―アッラーよ彼に祝福と平安を与えたまえ―がこう言われるのを聞いた。
≪許されたこと 1は明らかであり、禁じられたこと 2もまた明瞭であるが、その中間には多くの人々が知りえないさまざまな疑わしい事柄がある。
したがって疑わしい事柄を避ける者は、自分の宗教、名誉に関して〔過ちから〕免れるが、それに足を踏み入れる者は禁じられた行為を犯すことになる。
これはちょうど聖域のまわりで動物を飼う牧童 3が、聖域の中で動物に草を食ませる危険を冒すようなものである。まことに王者は誰しも聖域をもっているが、アッラーの聖域とはそのさまざまな禁令である。
まことに肉体の中には一片の肉があり、それが健全な場合肉体はすべて健全だが、それが腐ると肉体もすべて腐ってしまう。その〔一片の肉〕とは心のことに他ならない。≫
この伝承は、アルブハーリーとムスリムの 2 人が伝えている。
1 原語ハラールとは宗教で許されたこと、許された行為を指す。
2 原語ハラームとは宗教で禁じられたこと、禁じられた行為を指す。
3 聖域中で動物に草を喰ませてはならないが、えてしてその周囲で動物を飼う牧童は知らぬ間にその禁を破ってしまいがちである。
シェイフ ラマダーヌ ルブーティー師(アッラーのご慈悲あれ)の講義28(~30:00)参照
ハディース解説
預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)は、このハディースで、イスラームのフクム(見解)に含まれる事柄には3つに分類されることを教えています。
1. 疑いのないハラール
2. 疑いのないハラーム
3. 1と2のどちらにも入らないもの(ムシュタビハート:疑わしい事柄)
前回までに、1と2を説明しました。今日は、3の「疑わしい事柄」についての説明です。
3は、1のように確実にハラールであるという確証も、2のように確実にハラームであるという確証もないもの、です。つまり、はっきりした根拠ではなく、ただ、ハラールかもしれない、ハラールかもしれない、という自分の考えや想像だけが根拠であるような場合です。いくつか実例を挙げて、どの種類になるのかを説明します。まずは、一見3の種類に見えて、実は違うものというのがあります。
例えば、海から魚を獲った人が、それを食べようとしたら、ある人が「その魚は他の人の物じゃないか?」と言いました。魚には、特に何の印もなく、ただの魚です。その人に、「この魚が誰かの物だ、という証拠がありますか?」と聞くと、「いいえ」と言います。この場合、その魚が元々のハラールという性質を覆す確実な根拠がないのですから、それは、ハラールであり続けます。ですからこれは、3の疑わしい物ではなく、1のはっきりしたハラールのものという種類です。
逆の場合も同じです。例えば、ある男の人が、お金が必要になり、自分のお金では足りないので、親戚の叔父さんが長期間出張で外国に行っている間、その叔父さんの銀行からお金を下して来て、「このお金は叔父さんのものだけれど、もしかしたら、最近連絡がないから、外国で叔父さんはすでに亡くなっているかもしれない。もし亡くなっていたら、このお金は遺産として僕がもらえるものだから、このお金は僕にとってはハラールのお金だ!」と言って、使ってしまうような場合です。そのお金は、イスラーム法に照らし合わせて確実にハラールだという確証がありますか?ありません。ただ、自分で勝手に、もしかしたら、すでに遺産となって自分のものになっているかもしれない、と何の証拠もなく考えただけです。元のお金は、叔父さんのお金で、それを許可なく使うという行為は明らかにハラームです。ただ、死んだかもしれない、という確実でない想像によって、ハラームがハラールになることはありません。亡くなった、という確実な証拠が出てくるまで、そのお金は彼にとってハラームのままです。この場合も、3の疑わしい物ではなく、2の明らかなハラームの種類に入ります。
では、3の疑わしい物、というのは、どういう状態でしょうか?ハラールだという確証があり、また同時に、ハラームだという確証もある場合、この場合が3の状態です。それには、3つの種類があります。
1. 根拠に疑いがある場合。ハラールである、という根拠が確実ではなく、また、ハラームである、という根拠も確実ではない場合。
2. ハラールの物とハラームの物が混合している場合。
3. ハラールとハラームどちらの根拠もある場合。
1の種類から説明していきましょう。
1.根拠に疑いがある場合。ハラールである、という根拠がはっきりしておらず、また、ハラームである、という根拠もはっきりしていない場合。
例えば、ある人の所有である土地に、道路建設計画が持ち上がります。そこを通っている道路がとても狭く、交通事故が多発しているため、道路を拡張することになり、その土地が拡張する場所に含まれているためです。イスラーム法では、自治体が公共の安全のために必要な場合には、その土地に適切な金額(その土地と同等の価値があると思われる土地の値段と同額)を支払えば、その土地の権利を譲渡してもらうことはハラールです。しかし、ある人が、この道路の拡張は必要ない、と言い始めました。その工事は必要性がないから、必要のない工事のために、土地を買い取るのはハラームだ、と。必要がない場合には、イスラーム的にも、土地を強制的に奪うことはできません。その土地に道路を作るために土地を買い取ることがハラールだ、という根拠と、ハラームだ、という根拠が同時に混在してしまったのです。これは、「疑わしいもの」の状態です。さて、この場合は、どうしたらいいのでしょうか??
疑わしい物がある場合には、ワラア(アッラーを畏れて、ハラームの可能性が少しでもあることを止める)、という状態が奨励されます。預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)はおっしゃっています。
《(他人の)土地を1シブル(注)でも違法に奪い取った者は、最後の審判の日にアッラーは、彼の首の周りに七層の大地をぶら下げる(厳しい処罰を下す)ことになる。》ブハーリーとムスリム伝承
(注)手を広げて親指と小指を張った長さ
この場合、この真正ハディースがあるので、それに従い、土地を奪わないことを選択するのが賢明です。最初のハディースでも《したがって疑わしい事柄を避ける者は、自分の宗教、名誉に関して〔過ちから〕免れるが、それに足を踏み入れる者は禁じられた行為を犯すことになる。》とあります。土地を買い取らないことで、自分の宗教、名誉に対して過ちを犯さなくて済むのです。しかし、この自治体の決定が最終的なもので、道路拡張が絶対に必要だという証拠があり、反対する人も誰もおらず、土地の所有者が、買い取り金額に満足してそれを売ってくれるならば、その土地は完全にハラールとなります。
では、もし上記の場合のように、真正ハディースがない時は、どうしますか?その時には、元々の状態が何であるか(ハラームかハラールか?)、を見ます。最初の状態をよく考えて、それがハラールかハラームかを判断します。
例えば、ある人が、銃で鳥の狩猟をしていて、弾が木の上の鳥に命中し、鳥が地面に落ちましたが、そこに大きな岩があり、落ちた鳥は、岩に激突しました。自分の仕留めた鳥を見に行くと、鳥は死んでいましたが、その鳥が、弾に当たった時に死んだのか、それとも、その後、岩に激突した時に死んだのか、がわかりません。もしかしたら、弾は当たったけれど急所を逸れていてまだ生きており、木の上から落ちて岩に激突した時に打撲死したのかもしれないからです。その鳥がハラール(自分の撃った弾で死んだ)なのか、ハラーム(打撲死した)なのか、は、どちらもありえますが、どちらの根拠もハディースやクルアーンのような強い根拠ではありません。これは、「疑わしい物」、という状態です。では、どうすればいいのでしょうか?
この場合は、元の状態が何であるか、を見ます。死肉は、元々はナジャーサ(汚物)です。それが、ハラールの方法(狩猟)で獲った、という確証がない限り、その肉はハラームであり続けます。そのため、この場合、その鳥が、弾に当たって死んだ、という確証が出て来ない限り、その肉は、ハラームであり続ける、ということです。
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次回は、2)ハラールの物とハラームの物が混合している場合。をお送りします、インシャーアッラー。