過激派組織ISISがイスラームに反する点

仏週刊誌社襲撃と過激派組織ISISがイスラームに反する点

日本で行われているイスラームの勉強会から転載いたします。

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日本でも、テレビやメディアで「ISIS(ISIL/ダーイシュ)」について耳にすることが多いですが、名前に「イスラム」が入っているために、彼らのしていることがイコール、イスラームの教えだ、と誤解してしまう方がいるかもしれません。

そういうことがないように、昨年9月に発表された、イスラーム学者達が、彼らに向けて忠告をしている公開書簡の要点(実際の書簡はA4にして32ページの詳しく丁寧な物です)の日本語訳を、こちらに掲載します。

彼らの言動には、イスラーム学者たちがこの文書の中で指摘するような、イスラームに沿っていない点が、いくつもあります。(この書簡の要点で取り上げたものだけでも、24点あります)

日本でも声を発している有識者の方たちもいます。

「現実にISIS(ISIL/ダーイシュ)がやっていることは、元来のコーランやイスラムの教えとはまったく違う。罪もないシリアの人々から強奪し、言うことを聞かなければ虐殺すらする、名ばかりの“イスラム”にすぎない・・・」(奥田敦 慶応義塾大学教授)参照:http://www.kanaloco.jp/article/78513 神奈川新聞

もちろん、彼らのことを、ムスリムではない、ということも言い過ぎになってしまいます。アッラーと預言者ムハンマド様(アッラーの祝福と平安あれ)を信じている限り、殺人を犯していても、盗みを働いていても、どんな犯罪をしていようと、その人のことをムスリムではない、とは言えないからです。イスラームの教えからそれてしまった人たち、という状態ではあっても。

もしかしたら誤解されている方もいるかもしれませんが、彼らの名前が「ISIS(ISIL/ダーイシュ)」であるからと言って、彼らがイスラームの教えに沿っているというわけではまったくありません。イスラームとは逆のことをして、イスラームに背いていても、彼らは自分たちのことを「ISIS」と自称しています。

イスラーム世界では、イスラーム学者たちやイスラーム団体が、彼らに、以下の書簡を送って、彼らが自分たちが間違っていることに気づくことができるよう、誠実に忠告をしています。

「過激派組織ISISがイスラームに反する点」

イスラーム諸団体からISISへの公開書簡の要点より(イスラームの教えに反する彼らの言動⇔イスラームの重要な大原則) ※一部意訳 書簡の詳細は、http://lettertobaghdadi.com/

1.イスラーム法の見解を出す事が許されるのは、イスラーム法基礎学の文献で述べられている「ムフティー(イスラーム法学の見解を出すため、イジュティハードが可能な者)の条件」を満たす者だけであり、それ以外の者は勝手にイスラームの名のもとに見解を出してはならない。

また、クルアーンやスンナ全体を考慮せず、クルアーンの一節或いはその一部を単独で根拠に引用し、独自の見解を出してはならない

2.イスラーム法的見解は、アラビア語に精通している者しか出す事は出来ない(訳注:アラビア語話者と言うだけでは不十分で、アラビア語学の専門的知識が必要)

3.イスラーム法を安易に考え、イスラームの専門的知識の無い者達に任せてはならない

4.イスラームにおいては、ムスリム社会に住む者なら誰でも知っている様な根本的な事以外においては、学者間の意見の相違が許される余地がある(訳注:自分達の意見のみが正しいイスラームで、他の意見は間違っていると見なしてはならない)

5.イスラームにおいては、法的見解を出す際に、適用対象の「現状」を考慮する必要がある

6.イスラームでは、無実の人を殺す事を禁じている

7.イスラームでは、(訳注:例え敵であろうと)使者を殺す事を禁じている。ジャーナリストや援助団体の職員たちは使者と見なされるので、殺してはならない(訳注:使者のみならず、戦いの際でも敵方の非戦闘員を害する事は禁止)

8.イスラームにおいて、「ジハード」は防衛的なものであり、且つ、イスラーム法に沿った原因、方法、目的を満たさなければならない

9.イスラームでは、明らかに不信仰な言動を行った者以外は、不信仰者と見なす事を禁じている

10イスラームでは、啓典の民に、害を加えてはならない(訳注:啓典の民のみならず、宗教を理由に、無実の人を害してはならない)

11.ヤズィーディー教徒は、啓典の民と見なされるべきである

12.イスラームにおいては、イスラーム学者達が一致してその放棄を認めた奴隷制を、復活させてはならない

13.イスラームにおいては、宗教の強制を禁じている

14.イスラームでは、女性の権利を尊重しなければならない

15..イスラームでは、子供の権利を尊重しなければならない

16.イスラームでは、刑罰を適用する前に、公正さと慈悲を保証する正当な手続きを経なくてはならない(訳注:専門知識があり、公正で慈悲に満ちた見解を出せる裁判官の裁定なくして刑罰は実行されない。イスラームの刑罰は、少しでも疑わしい所があれば実行されない)

17.イスラームでは、人々を拷問にかける事を禁じている

18.イスラームでは、死体を痛めつけることを禁じている

19.イスラームでは、自分が行った悪事を至高なるアッラーのせいにする事を禁じている

20.イスラームでは、預言者様達(彼らの上にアッラーの祝福と平安あれ)やサハーバ(彼らの上にアッラーのご満悦あれ)の御墓等を破壊する事を禁じている

21.イスラームでは、統治者が人々の礼拝を許している限り、明確な不信仰の言動以外の理由で、統治者に謀反を起こす事を禁じている

22.イスラームでは、イスラーム共同体の合意(イジュマーウ)なくして、カリフを宣言してはならない

23.自分の祖国に属する事は、イスラームにおいて合法である

24.イスラームでは、預言者様(彼の上にアッラーの祝福と平安あれ)の亡き後、必ずしも全員がヒジュラをしなければならないわけではない

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イスラーム世界の本当の問題は、無知や無学、です。ムスリムであっても、クルアーンを読んだことがない、イスラームの教えを学んだことがない、という人たちが、イスラーム世界に大勢いること、です。

私たちムスリムがそのひとりにならないよう、これらの事件をきっかけに、自分のできることから始めましょう。

ある方の友達がサウジアラビアのマッカにハッジ(大巡礼)に行き、その1年後に再度ハッジに行った時に、「今回のハッジでも、一年前に見たのと同じ悪いことを見た。」と言いました。するとそれを聞いた先生は、「では、あなたはこの一年間で、あなたが見た悪いことを改善するために、何をしたのか、を考えてください。」とおっしゃいました。